タイ舞踊の楽器

 タイ舞踊は、わが国ばかりではなく世界的にもよく知られていますが、その音楽といえば、舞踊の伴奏として注意を向けてもらえない陰の存在になっていると思われます。
 しかし、タイ舞踊の音楽は、世界的にも珍しい音階やリズムを奏でるなど文化的にとても貴重な存在であり、また、宮廷で育まれたもの、宗教的な儀式、年中行事や祭りの際に使われたものなど様々な歴史的背景を持つ、まさにタイの歴史そのものであると言えます。
 この音楽は、タイ舞踊の独特な雰囲気を醸し出しますが、その主な理由の一つは、ここで使われている楽器の奏でる音にあります。


<木琴(ラナート)の種類>
・ラナートエークレック(高音鉄琴)
 見た目は木琴と同様であるが、鍵盤部分が金属で出来ている。ラーマ4世時代の初めに作られたもので、最初は鍵盤が鉄でつくられたことから、「レック(鉄)」が名前に付けられた。

・ラナートトゥムレック(低音鉄琴)
 西洋の音楽をヒントに作られた鉄琴で音を低くするためにラナートエークレックよりも大きく長くしてある。

・ラナートエーク(高音木琴)
 拍子木から発達し、いくつもの木の板に穴をあけてならべ音が美しく響くように糸で本体に吊るしてある。
音は21音あり、はっきりとした音でウォンピーパート*(打楽器グループ)の中で旋律をリードする役目をもっている。

・ラナートトゥンマーイ(低音木琴)
 ラナートエークと同様の作りをしているが、より低い音を出すために鍵盤が長く、大きく薄く作られており、表面の湾曲が大きい。一台に17〜18の鍵盤があり、ラナートエークの旋律を追う、もしくは和音をつくるよう演奏される。


<クイ(笛)>
・クイピィエンオー(低音笛)

 タイ楽器の中でも、笛は応用範囲が広い。
45〜48センチの長さで、ウォンクルアンサーイ*(弦楽器グループ)、ウォンモホーリー*(歌+弦楽器)、ウォンピーパート*(打楽器グループ)いずれにも入ることができ、独奏で演奏されることも多い。


<太鼓の種類>
・トーンルタップ(片面太鼓)
 「トーン(頭でっかちの)」「ルタップ(片面太鼓)」の意味で、座って足で支えてつかう。木作りのトーンチャットリーと焼物作りのトーンモホーリーの2種類ある。片手で太鼓面を叩きながら、もう片方の手で底をふさいだり空けたりして、音を調節する。

・ラムマナー(マレーシア風太鼓)
 片面太鼓で、マレーシアの「ラバナ」という太鼓が起源だと考えられている。ラムマナーには2種類あり、小さいものをラムマナーモホーリー、大きいものをラムマナーラムタットという。

・クローンケーク(インド太鼓)
 筒状の形が特徴で、太鼓の両面のうち、片面は高い音、もう片面は低い音がでるようになっている。
高音面をトゥアプー、低音面をトゥアミアといい、両面をてのひらでたたいて演奏する。この太鼓にはクローンヂャワー(ジャワ太鼓)の別名もある。太鼓の中でもリズムをリードする太鼓であるが、ウォンクルアンサーイ*(弦楽器グループ)ではこの太鼓の代りにラムマナーがリード太鼓になることもある。

・クローンソーンナー
 両面太鼓で、クローンソーンナーより小さいものはプーンマーン、大きいものはタッポーンと言う。
こぶしで両面をたたいてリズムをとる。ラーマ2世時代の昔から使われており、セーパー*(長編劇詩)の伴奏にてよく使われる。


<ソー(弦楽器)の種類>
・ソーウー(低音二弦胡弓)
共鳴部分にココナツの実を使って作る2弦の弦楽器。ソーの中では一番低い音がでる。
ウォンクルアンサーイ*(弦楽器グループ)、ウォンモホーリー*(歌+弦楽器)で使われる。アユタヤ時代から使われている。

・ソードゥアン(二弦胡弓)

 共鳴部分に筒型の木を使うため、大きくてはっきりした音がでる。ソーの中では一番大きな音がでるので、主旋律に使わ
れることが多い。ウォンクルアンサーイ*(弦楽器グループ)、ウォンモホーリー*(歌+弦楽器)において、常にソーウーとペアで演奏される。

・ソーサームサーイ(三弦胡弓)

 やはりココナツの実で共鳴部分を作る三弦の楽器。弾きこなすのが難しいが、非常に美しい音色が特徴である。

・コーンウォンヤイ(大円形銅鑼)

 コーンと呼ばれる金の銅鑼を16音そろえて、低音から高音へ順に円形に配置したした楽器。演奏者は真中に入り、周囲の銅鑼を叩いて演奏する。

・キム(中国琴)

 ラーマ4世時代に中国から来た楽器。昔は叩いたり、弾いたり、はじいたり様々な演奏の仕方があったようであるが、今は小さな撥で弦を叩いて音をだす。美しい和音をの出せる楽器である。

・ジャケー(タイ風琴)

 三弦の弦楽器。横に座りピックで弦を連続して弾いて演奏する琴のような楽器。演奏する姿が美しいので女性が演奏することが多い。

・チン
 手のひらに収まるくらいの金属製のちいさなお椀方のシンバルで、タイの音楽には欠かせない楽器。ウォンクルアンサーイ*(弦楽器グループ)、ウォンモホーリー*(歌+弦楽器)、ウォンピーパート*(打楽器グループ)いずれにも必要であり、特に歌の入る曲には歌い手が「チン−ジャップ」と鳴らしながらリズムをとる。

・チャープ
 チンと同じ役目をする楽器であるが、チンよりも大きく音が低いため、テンポの速い曲に用いられることが多い。大小2種類あり、12から14センチのものと24から26センチのものがある。

  (注)タイ舞踊の音楽は、演奏する曲目によって、楽団の楽器の構成が異なる。
       ウォンピーパート=打楽器中心のグループ。踊りの曲やにぎやかな曲を演奏する。
       ウォンクルアンサーイ=弦楽器中心のグループ。タイ舞踊の音楽単体で鑑賞する際にはこのウォンが多い。
       ウォンモホーリー=歌が入る曲を演奏する際のグループで、弦楽器が多い。
       セーパー=楽器の伴奏に合わせて独唱する長編劇詩のこと。